ドローンテロ対策についての議論~SkyWallや電磁パルスなど

ドローンは武器となりうることから、テロに用いられる危険があります。首相官邸やホワイトハウスに落下した事故があり、前の記事に書きましたが、2018年8月に爆発物を積んだドローンによるベネズエラ大統領の暗殺未遂事件が起きています。

国内では、今後、即位の礼、ラグビーのワールドカップ、東京オリンピック、パラリンピックといった重要イベントが予定されていることからドローンテロ対策が検討されており、前の記事で紹介した、小型無人機等対策推進室が設置されています。

2018年11月7日のSputnikによれば、ロシアのワールドカップのテロ対策に関して、ロシアの連邦保安庁長官の談話を紹介しています。詳細は不明で、テロ計画が実際にあったのかは定かではありませんが、「ワールドカップで、テロリストによるドローンを使用するための試みを見つけ、阻止するあらゆる対策を講じた」と述べているようです。

2018年11月13日の日経新聞に、ドローンテロ対策に関する記事が出ていました。

即位の礼、オリンピック、パラリンピックの会場では、ドローン飛行を原則禁止する法整備を行う予定とのことです。

その上で、テロ対策に関する方法とその長所・短所について論評しています。面白かったので、まとめてみました。

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①散弾銃(ショットガン)

○:  既にある手段で手っ取り早く侵入を阻止できる

×:  ドローンの残骸や危険物が飛散するため、多数の人が集まる場では使えない。

~オリンピック会場では無理そうです。

②妨害電波

○: 米国では強力な電波を出して相殺を乗っ取る方法も試みられている。

×: 日本では電波法の規制を受けるため、場所と期間を限定するなど、柔軟な運用が難しい

~上記ベネズエラ大統領の事件でも、通信妨害装置が用いられていたものと思います。妨害電波を流すための無線局開設(電波法4条参照)を誰が行うのかという問題に関連する気がしますが、法改正や特例を規定することによって実現する余地がないのか、興味のあるところです。

③網付の警備用ドローンによる捕獲

×: 発見・追撃・捕獲までの時間が長く、逃げられてしまうおそれあり。

~警視庁のインターセプトドローンチームによって使われているようです。

④猛禽類を調教して飛行中のドローンのバランスを崩す

×: 調教の手間やコストの割に出番が少ない。

~正月に浜離宮の鷹匠のショーを見にいったことがありますが、多くの人間を前にすると、予定通りに飛んでくれず、上空にカラスなどがいるとなおさらダメでした。現実的な対策とは思えません。

⑤英国ベンチャー企業のOpenWorks Engineeringが開発したDrone Defense System(SkyWall)

照準器の誘導表示に従って、射程100~300mの迎撃弾を発射すると、約3m四方のネットが広がり、侵入ドローンを包み込むとパラーシュートが広がり、ゆっくりと地上に下ろすことが可能とのこと

○:  発見から捕獲までの時間が短い。ドローンの残骸等が飛散しない。

×:  連射機能を備えていない。コストが高額(本体+迎撃弾5発で約2000万円)

~ドイツ警察など欧州では、SkyWallの運用を始めているとのことです。動画が面白かったので、下記に、youtubeのリンクを貼ってみました。

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上記①から⑤のほか、⑥電磁パルス(electromagnetic pulse/interference pulse)を用いる方法も考えられるようです。関東航空計器は、電磁パルスを発生させ、ドローンを無力化するための装置の市場調査を始めたとのことです。

2018年12月4日の日刊工業新聞によれば、

・ドイツのディール社(Diehl)の電磁パルス発生装置を用いることを想定しており、電磁パルスの照射を受けると機器内部の電子回路が誤作動するため、無力化できる。

・有効範囲は250m

・持ち運び可能で、広角に照射でき、複数機の飛来にも対応できる。

・無力化の対象を不審なドローンのみに限定し、自社ドローンに影響ないようにする電磁波調節も可能

・価格は数千万円程度

とのことで、関東航空計器は、市場調査の上、販売認可が得られれば、防衛省や警備会社への売り込む方針のようです。

Diehl社のHPEM effectorsという製品かなと推測します。

②と同様、利用する場合には、電波法の規制が及ぶように思われます。技術の内容と共に、今後の規制の動向も注目されます。

 

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