銀証分離規制改正の方向性

金融・バンキングに関するトピックですが、

銀証分離規制の見直し、特に、非公開情報の共有に関する規制緩和に関する議論が、金融審議会の「市場制度ワーキング・グループ」で行われていましたが、提言・立法の方向性が固まっています。

金融庁のHPにて、2021年6月18日に、第二次報告が公表されています。、

23ページ以降に、非公開情報の共有の規制に関して、以下のような記載があります(以下、部分抜粋)

(2)情報授受に関する規制等のあり方

①情報共有に関する新たな規律と対象とする法人の範囲

対象とする法人(後述参照)に係る非公開情報等を共有するに当たり、当該法人の同意を不要とする。ただし、当該法人からの停止の求めには応じる必要があるものとする。そのため、現行のオプトアウトの規定(みなし同意)は廃止し、新たなオプトアウトのあり方としては、極力手続を簡素化する(例えば、オプトアウトの方針を自社のウェブサイトに掲載するだけで良いとすること等。)。

当該見直しに係る法人の範囲については、資本市場の一層の機能発揮の促進や国際金融センターとしての市場の魅力向上等の本規制における検討の視点のほか、情報授受規制において、法人と個人の区別だけでなく、法人においても大企業とその他の中堅・中小企業とは区別する必要があるとの指摘を踏まえることが重要である。

こうした点から、上場企業(グループ)等を対象として見直しを行うことが適当である。

②オプトインの簡素化

新型コロナの中で加速化するデジタル化への対応を踏まえ、手続のデジタル化を促進させる観点から、中堅・中小企業や個人も含め、現行制度において電子メールを含む電磁的方法による同意取得が未整備となっている部分について対応を行うほか、電磁的方法による同意取得時に必要となる事前承諾を撤廃することが適当である。

③その他関連する規制

(ⅰ)ホームベースルール

2008 年に、銀行・証券会社間では事後届出により役職員の兼職が認められたが、非公開情報を用いて業務を行う部門を兼職している役職員には、いずれか一方の管理する非公開情報にしかアクセスできない等の規制が適用されることとなった(いわゆるホームベースルール)。本規制は、事前予防的措置である情報授受規制の更なる事前規制であるとも考えられることから、役職員の兼職規制の見直しの趣旨
が確保されるよう、本規制の撤廃を行うことが適当である。

(ⅱ)外務員の二重登録禁止規制

金商法では、金商業者等の役員又は使用人が当該金商業者等のために有価証券の売買等を行う場合、外務員としての登録が必要となっている。外務員は、その所属する金商業者等を代理して行為する権限を有するものとみなされており、登録拒否要件により同時に複数の金商業者等(例えば、証券会社と登録金融機関)に所属することはできず、1社専属制となっている。

本規制について見直しの検討を行う場合には、責任の所在が不明確になることの問題点や、どのような誤認防止措置が考えられるか等の論点について検討を行う必要がある。そのため、本規制については、その見直しの必要性を含め、今後更に議論を行う必要がある。

(ⅲ)引受関係の諸規制

銀行の役職員が、引受に関するアドバイスや紹介にとどまらない具体的な条件の提示や交渉を行うことを禁止する発行体クロスマーケティング規制や、1993 年に業態別子会社形式による銀行・証券の相互参入が認められた際に導入された、主幹事引受規制(証券会社がその親子法人等が発行する有価証券の引受主幹事会社となることに関し、一定の要件を満たす場合を除き原則禁止)及び引受証券の売却制限規制(証券会社が有価証券の引受人となった日から6か月を経過する日ま
での間において、その親子法人等に当該有価証券を売却することが一定の場合を除き原則禁止)について、これらの行為は、利益相反や有価証券の発行条件等が歪められる等の懸念が指摘されている。これらの規制については、適切な引受審査を通じたプロセスの透明性を確保することが重要であり、慎重に検討する必要がある。

(3)弊害防止の実効性の確保に向けた方策

例えば、これまで優越的地位の濫用に関する行政処分は限定的であるが、情報授受規制等の緩和に伴い、事業法人からは、優越的地位の濫用に対する懸念が増大するとの指摘があった。こうした指摘や前述の欧米の規制・実務も踏まえつつ、今後、規制の見直しに当たっては、法令における規制整備に加えて、監督指針等を見直すことにより、
金融機関自身による内部管理の強化を促していくことが適当である。

あわせて当局においても、利益相反管理に関し、体制整備状況等形式面・体制面にとどまらず、管理の対応のあり方等実質面に対するモニタリングを強化していく等、実効性の確保に向けた取組を行っていくことが適当である。加えて、顧客情報管理に関する銀行・証券会社に対するモニタリングについては、当局においては各々別の部署が担当
しているところ、顧客情報管理の実効性を確保する観点から、銀行・証券会社各々に対するモニタリングの水準の統一や、金融グループ内の一体的な管理を促す観点から、当局における関係部署間の連携強化を図っていく必要がある。

このように、金融機関自身の内部管理の高度化や、当局における監督指針等の見直しに加え、モニタリングの実効性の強化を通じて、弊害防止の実効性の確保を図っていくことが重要である。

①顧客情報管理

現在、法人関係情報に関する一部の規制については、証券会社にのみ適用されている規制が存在する。このような規制については、情報授受に関する規制等を緩和し、銀行が投資銀行業務と大企業向け商業銀行業務を行う場合には、欧米金融機関における規制の適用関係と同様に、登録金融機関としての銀行に対しても証券会社と同様の規制を課すことが適当である。具体的には、金融機関及びその役職員における法人関係情報に基づく有価証券の自己売買等の禁止規定については、現在、証券会社にしか規制が課せられておらず、登録金融機関としての銀行に対しても同様の規制を課すことが適当である。

また、顧客情報管理の実効性を確保する観点から、欧米の規制・実務も踏まえながら、法人関係情報管理におけるチャイニーズウォール構築やその具体的な方法、ウォールクロスを行う際の体制整備のあり方のほか、法人関係情報以外の顧客情報も含めた“Need to know”原則に基づく情報管理の徹底の必要性等、監督指針等において具体的に示していくことが適当である。

②利益相反管理

2008 年の利益相反取引防止のための体制整備義務の導入以降、国内金融機関の利益相反管理に係る体制整備は一定の進展が見られている。今後は利益相反管理の運用実務面での更なる実効性の確保を促すことが重要であり、例えば、当局のモニタリングにおいて、利益相反管理のあり方について金融機関と対話を積み重ねることを通じて、適切な利益相反管理の実効性を高めていくことが適当である。

具体的には、監督指針において、利益相反のリスクが高いと指摘される典型的なケースを具体的に例示した上で、主に以下の内容を新たに規定し、モニタリングの強化を通じて、利益相反管理の実効性の確保を促していくべきと考えられる。

・ 特に利益相反のリスクが高いとして例示した典型的なケースについて、その解消が図られるよう適切な管理を行うことの必要性

・ 特にグローバルに金融サービスの提供を行う金融機関においては、グローバルでの組織的・一元的なシステムによる管理等のグローバルベースでの適切な管理の重要性

・ 利益相反管理の実効性の確保を図る観点から、グローバルスタンダードの実務慣行も踏まえつつ、利益相反の確認やそれに伴う対応の判断時における経営幹部やコンプライアンス部門による適切な関与の重要性

また、今後、利益相反の可能性が特に高く対応が必要なケース等については、その適切な対応のあり方も含め監督指針に追加することや、更なる対応が必要な場合には行為規制での対応の必要性が考えられるほか、金融機関が顧客に対して損害を与えた場合の損害賠償規定の必要性を検討することも考えられるとの意見もあった。

③優越的地位の濫用防止

優越的地位の濫用を予防・防止する観点から、監督指針において、金融機関の優越的地位の濫用防止態勢に関する一定の考え方・着眼点を明確化するとともに、モニタリングの強化を図る観点から、当局において端緒をつかむための窓口設置や重点的なモニタリング、公正取引委員会との連携を強化していくことが適当である。

④その他

顧客情報の管理については、“Need to know”原則において情報共有の範囲に関する欧米金融機関の実務・考え方を踏まえた対応も考えられる等金融機関の内部管理の面からその徹底が図られることが重要であるが、顧客毎のニーズに応じて適切な管理を行う観点から、金融機関と顧客の間で、守秘義務契約を締結してその管理を強化する等、欧米と同様に、金融機関と顧客の間で、民・民間の契約に基づく管理を行っていくことも有益な実務であると考えられる。

(2021.6.20)

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