富山の航空法違反の事例

2018年9月15日の朝日新聞に、富山県内で無許可でドローンを飛ばした疑いで50代の男性が、航空機法違反容疑で、書類送検されたとの記事がありました。同日付の読売新聞や北日本新聞も報じており、先日紹介した、大垣の事件もそうですが、ドローン絡みの刑事事件は、注目されるように思います。

人口密集地での無許可での飛行とのことで、航空法132条3号違反の容疑ということになります。記事によれば、付近にいた人が飛んでいるドローンに気づき、警察に通報したようです。容疑者は「建物を撮影したかった」と供述しているとのこと。

新聞からは、ドローンがどの場所を飛行していたかは不明です。いずれにせよ、無許可飛行であれば、違反は明白であり、処罰は容易と思います。

しかし、仮に、許可を取得の上、カメラ付のドローンが、建物の敷地を飛行した場合に犯罪が成立するのかという点が気になるところです。下記の住居侵入罪(刑法130条)はどうか。

刑法130条前段:   正当な理由がないのに、人の住居——–に侵入した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

同罪の成立は「人による侵入」が前提として必要とされており、単に他人の敷地でドローンを飛行させるような場合には、同罪の成立は難しそうです。西田典之他・注釈刑法(第2巻、各論(1))(有斐閣コンメンタール)p293には以下のような記述があります。

侵入という言葉は、単なるプライバシー侵害ではなく、あくまで住居等に身体の全部が入ることを含意している。それゆえ、仮にプライバシー侵害の程度が行為者が実際に住居に立ち入った場合と差がないとしても、たとえば、高性能カメラを搭載した可動機器を住居に入れる行為は侵入にはあたらない。

この結論には意外感があるかもしれません。上記注釈刑法p294は、上記の記述に続いて、以下のように論じています。

もっとも、そのような行為の当罰性が高いことは疑いがなく、これを刑法典上の犯罪とすることも、立法論的には考えうるところである。

また、態様によっては、威力業務妨害罪(刑法234条)、軽犯罪法、各都道府県毎の迷惑防止条例が成立する余地もありますが、それぞれ成立する場面が限定されており、常に成立する訳ではありません。

 

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