スマートシティ構想におけるドローンの利用

先日の記事で、産業用ドローンに関わる特区法改正が遅れているというニュースについて書きましたが、これとは別に、Society 5.0に関連して、AIやビッグデーター等を活用した都市計画(スマートシティ構想)が政府において検討されており、特区制度の利用が計画されており、ドローンの利用も1つの構成要素として組み込まれています。

2018年10月から有識者懇談会において協議され、11月16日の第3回会合において、「スーパーシティ」の基本構成要素がまとめられています。HPにおいて全文を見ることができますが、骨子を抜粋の上、まとめてみました。

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<基本構成要素>

(1)未来像

●以下の領域にまたがる社会の未来像を先行実現。

・移動: 自動走行、データ活用による交通量管理・駐車管理 など
・物流: 自動配送、ドローン配達 など
・支払い: キャッシュレス など
・行政: ワンスオンリー など
・医療・介護: AI ホスピタル、データ活用、オンライン(遠隔)診療・医薬品配達 など
・教育: AI 活用、遠隔教育 など
・エネルギー・水: データ活用によるスマートシステム など
・環境・ゴミ: データ活用によるスマートシステム など
・防災: 緊急時の自立エネルギー供給、防災システム など
・防犯・安全: ロボット監視 など

●少なくとも以上の5領域以上で、実証事業レベルではなく、2030 年頃に実現される未来像(域内は自動走行のみ、域内は現金取り扱いなし)を域内限定で完全実施

●領域を超えた横断的データ連携基盤の構築

●データの適正な管理・セキュリティ、サイバーテロ対策の確保(データローカライゼーション等の検討も含む)。

●データ連携のため、必要な通信基盤・センサー・デバイスなどを埋め込んだインフラ整備。

(2)住民の参画

住民が自ら未来像の実現に合意し参画することが前提。住民/地権者の一定以上(以下の制度例などを参考に設定)の合意を要件とする。

(3)強い首長

●住民の合意形成を促進・実現できる、ビジョンとリーダーシップを備えた首長。それを支える組織

(4)技術を実装できる企業

●世界最先端の技術を実装できる、中核となる企業。

<エリアの選定>

●ごく少数のエリアを、透明なプロセスで選定。
●以下の2タイプを想定。
1)新規開発(グリーンフィールド)型: 都市の一部区域や工場跡地などで、新たな都市開発を行い、新たな住民を集める
2)既存都市(ブラウンフィールド)型: すでにあるまちで住民合意を形成しつつ、必要な再開発・インフラ整備を行う
・なお、いずれのタイプも、行政区域(市区など)と一致する場合も、その中の一部区域(ディストリクト)となる場合もありうる。

<域内の開発と運営>

●国・自治体・民間で構成する機関(従来の特区の区域会議をさらに充実・強化した、いわばミニ独立政府)が、域内の開発と運営の主体となる。
●開発計画/運営計画の策定・改訂: ミニ独立政府で計画案を作成し、住民・地権者の合意確認を経て確定(まだ住民不在のときは地権者のみ)。

<国の役割>

●域内の規制設定の権限は原則としてミニ独立政府と住民に委ねる。
・社会の未来像に関わる幅広い法律につき、一部規定は条例/住民合意により特例を設けられることとする。
・上記法律の政省令などは包括的に、条例/住民合意により特例を設けられることにする。
(注)建築基準法、景観法などの条例による規制特例の規定例を参考に、さらに要検討。
●必要なインフラ整備は国主導で迅速に行う。これに向け、当面、先行的な調査等のための予算を確保する。
●あわせて、官民連携のファイナンス手法も検討する。

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自動走行、キャッシュレス、AI医療等と共に、ドローン配達が記載されています(当初協議では、スマート農業についても検討されていました)。「少なくとも5事業」に入れば、有人地帯を含め、域内で完全実施されるという想定と思われます。

2018年12月に海外調査を行い、2019年1月に最終報告のとりまとめ、2019年中に制度整備、エリア公募・選定といった野心的なスケジュールが組まれています。法改正となれば、今までにはない新しい地方自治のシステムの導入となり、なかなか面白い法律になりそうだなと思います。

もっとも、実現は2030年頃とのことで、随分先のことで、なぜ10年もかかるのだろうという気もしました。

公表されている内閣府の資料によれば、以下の海外都市における取り組み等を意識しているようです。

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カナダトロント市: Google系列会社が行政と連携し、ありとあらゆる場所、ヒト・モノの動きをセンサーで把握し、ビッグデータを活用した都市設計が進行中

中国・杭州市: アリババ系列会社が行政と連携し、交通違反や渋滞対策にカメラ映像のAI分析を活用。ベンチャーによる無人コンビニも展開中

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