ドローン法制の大幅な変更(登録制導入)への動き

2019年8月22日付の日経新聞(一面)によれば、政府は、2022年度を目標に、ドローンの所有者、使用者、機種等の登録制度を創設するとのことです実施されれば、ドローン法制の大幅な変更になります。

以下、ポイントの整理・検討を試みました。

1.  意義

「宅配サービス等の商用化をにらんだルール作り」が主眼とのことなので、商用ドローンのみを登録の対象にすることも考えられますが、記事によれば、米国、カナダ、フランス、オーストラリア、中国等と同様に、全てのドローンが登録を要することになりそうです。

実施されれば、現在の一定の飛行に関する要許可・承認から、一律要登録ということになりますので、我が国のドローン法制の枠組みが180度転換することになります。

なお、登録手続はネット申請など簡素化の工夫が検討されるようです。

2.  登録制度を創設する理由

以下の点が挙げられています。

・事故や紛失時の特定の容易さ
・行政が認めていない不特定多数のドローンが飛行する事態を回避
・登録制を土台に交通管制システムを整備する

3.  内閣官房によるルール整備

内閣官房の「小型無人機等対策推進室」を中心にルール整備を行うとのことで、この点も特徴的です。

2019年5月27日の「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会(第11回)」では、ロードマップ(2019年度)と共に、今回の登録制度について議論されており、継続的に検討されていたものと思われます。「レベル4に向けた議論の論点整理」という議事録の中に記載されています。

また、ロードマップにも、「セキュリティの観点を含めて総合的な検討・制度整備等を推進」と記載されており、今回の登録制の検討は、織り込まれています。

4.  立法スケジュール

日経によれば、以下のようなスケジュールが想定されているようです。

2019年秋:     有識者を集めた検討会の組成
2019年度末: 検討会による報告書の作成
2021年度:     航空法等の法案提出、国会での成立

制度の大幅な改正ということもあり、中期的な検討・作業になりそうです。

5.  レベル4のためのその他の法的課題~他人の権利との関係

レベル4により他人の土地の上空を飛行する場合(第三者上空飛行)には、他人の権利との関係をどう整理するかという点も問題になります(過去の関連記事)。ドローンが許可なく他人の土地の上空を飛行すると、土地所有権やプライバシーを侵害する可能性があると考えられているからです。

この点を明示したものとして、国土交通省の「無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&AのQ5-7」や、総務省の「ドローンによる撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」があります。

2018年のロードマップの補足資料にも、これを前提として、以下のような記載があります。

「レベル3、4の飛行による利活用が本格化する社会に向けて、ドローンが飛行する2020年代の空の在り方や必要な技術や制度等の検討を進める。機体の登録と識別、事故の調査と分析、被害者救済(自動飛行する小型無人機の事故責任と保険)、小型無人機の飛行と土地の所有権の関係、プライバシーの保護、サイバーセキュリティ、いわゆるドローンハイウェイ構想等の論点整理を行う。その後、国際的な動向を把握し連携しつつ、各論について検討する。」

土地所有権を幾ばくか相対化できないかという問題にも関連します。この点は、所有者不明土地の処理等をめぐり、別の観点から、現在盛んに議論されているように思います。

(2019.8.24)

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