農業用ドローンの規制緩和に関する規制改革推進会議における第5次答申の内容

規制改革推進会議における第4次答申の内容を前に取り上げたことがありますが、2019年6月6日に規制改革推進会議において、第5次答申が公表されています。

農林分野のドローンの活用に関する規制改革について、現状の取組と、計画についてまとめらています

農林分野のドローン規制改革の進捗はなかなか分かりにくいですが、現状の進捗状況と今後の予定に関して参考になります。

以下、第4次の時と同様、該当部分について抜粋してみました。

II  各分野における規制改革の推進

1  農林分野

(1)ドローンの活用を阻む規制の見直し

ア 航空法に基づく規制
【a,c:令和元年7月措置、b,d,e:令和元年度上期措置】

<基本的考え方>
平成27 年の航空法(昭和27 年法律第231 号)改正後、無人ヘリコプターであっても最新型ドローンであっても、航空法上の無人航空機の安全規制は、国土交通省に一元化されている。

しかし、農薬散布のための無人航空機の航行の安全規制に関しては、国土交通省の「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」(平成27 年11 月17 日国土交通省航空局長通知。以下「審査要領」という。)に加えて、「空中散布等を目的とした無人航空機の飛行に関する許可・承認の取扱いについて」(平成27 年12 月3日国土交通省航空局長・農林水産省消費・安全局長通知)及び「空中散布における無人航空機利用技術指導指針」(平成27 年12 月3日農林水産省消費・安全局長通知。以下「技術指導指針」という。)に基づく制度が存在している。技術指導指針においては、一般社団法人「農林水産航空協会」(以下「農水協」という。)が航空法上の代行申請を行うことのできる登録認定等機関として唯一認められており、代行申請に加えてオペレーターや機体の認定事業も実施している。

技術指導指針は、航空法と農薬取締法(昭和23 年法律第82 号)に基づき策定されていると思われるが、具体的な法的根拠は明確ではなく、特に航空法上の義務を課したものではないにもかかわらず、農業の現場では、農水協によるオペレーターや機体の認定が義務であるとの誤解や、農水協が航空法に基づく許認可権限を有しているとの誤解が存在する。

また、最新型ドローンの自動操縦機能、カメラ機能等は、ドローンの航法精度を上げ、安全性を確保するのに有効な手段であり、国土交通省も審査要領で安全確保策として認めているにもかかわらず、農水協はこれら機能を備えた最新型ドローンの代行申請は受け付けていない。

さらに、ドローン利用の際は、国土交通省に対する報告に代え、技術指導指針に基づく都道府県・地区別協議会への事前の事業計画書と事後の事業報告書の提出が求められており、これが農業従事者への負担となり、農業用ドローンの導入を阻害している。

<実施事項>
a 最新型ドローンについて、農林水産省は現在の技術指導指針を廃止し、新たに農薬の安全使用に関するガイドラインを策定する。国土交通省は、新たに農薬等の空中散布用の航空局標準マニュアルを策定する。

b 農水協が直接行うオペレーター認定、機体認定は、農水協の自主事業であって、これを取得する義務はない旨、農林水産省より地方自治体等関係者への周知を徹底する。

c 従来からの無人ヘリコプターについては、現場の混乱がないよう十分な配慮を行いながら、当面、次の措置を講じる。

– 航空安全に係る事項は、国土交通省の「審査要領」、又は国土交通省と農林水産省の共管による通達により規制する
– 農薬安全に係る事項は、農林水産省が新たなガイドラインを策定する
– 都道府県・地区別協議会等への報告は、必要最小限に限定し、オンライン報告を可能とする

d 国土交通省の審査要領は、自動操縦、手動操縦にかかわらず、一律に10 時間の飛行経歴要件を課している。しかし、自動操縦の農業用ドローンについては、十分な自動操縦に係る機能・性能を有する機体を使用し、機種ごとの機能・性能に応じた飛行経路設定などの基本操作や、不具合対処など、必要事項についての講習を受けた実績がある場合には、この飛行経歴要件を不要とする。その際、飛行経歴要件を不要とするためにいかなる講習(座学・操縦練習の実施など)を受ければよいか例示するなどしてわかりやすく明らかにするよう審査要領を改正し、航空局ウェブサイトにおいて周知する。

e 農林水産省は、審査要領に基づく代行申請制度を通して最新型の農業用ドローン活用が拡大するよう、ディーラー、メーカー等に対し、顧客の代行申請を行うよう促す。これによって、自動操縦機能、カメラ機能等を搭載した機体の申請実績を作る。

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イ 農薬取締法に基づく規制
【措置済み】

<基本的考え方>
農薬を効率的に使用するにはドローンの活用が効果的である。農薬取締法により、農薬メーカーには農薬の希釈倍数などについて登録・表示する義務が課されており、農薬使用者には、希釈倍数、使用時期などの基準を遵守する義務が課されている。

陸上散布で認められている低い希釈倍数では、ドローン散布の際は散布液量が多くなり過ぎ、ドローンを活用できない。そのため、ドローンで活用できる農薬は、約500 種類にとどまる。品目ごとに見れば選択肢は更に少なくなり、例えば「かんきつ」については、わずか2種類である。ドローンで活用できる農薬の品目拡大が必要であるが、陸上散布において認められている農薬のドローン散布に
当たっては、希釈倍数要件の緩和が不可欠である。

しかし、農薬の希釈倍数の変更に当たっても、改めて農薬メーカーの登録・表示が必要とされ、そのために独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)による検査が必要となる。この検査においては農薬残留データを一から取り直すことが求められるため、数千万円のコストがかかり、ドローンで利用可能な農薬の種類の拡大を阻んでいる。

<実施事項>
a 農薬取締法上、いかなる散布機器を用いるかは農薬を使用する者が遵守すべき基準に含まれていない。農林水産省は「散布」、「雑草茎葉散布」、「湛水散布」、「全面土壌散布」等の使用態様においてドローンを使うか否かは、農薬使用者の自律的な判断に任せる旨、解釈を明確化し、関係者に通知する。

b 既存の(地上)散布用農薬について希釈倍数の見直しを行う変更登録申請の場合、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の検査において作物残留試験を不要とし、薬効・薬害に関する試験のみとすることにより、検査コストの大幅な削減を図る。

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ウ 電波法に基づく規制
【a:令和2年中措置、b,c:令和元年度中速やかに措置、d:令和元年中速やかに立ち上げ、以降継続的に措置】

<基本的考え方>
ドローンの航行の安全を確保する上で、リアルタイム通信による位置情報の収集や、カメラによる視野確認が有効である。また、ピンポイントで肥料や農薬を散布するためにもカメラによる視野確認が必要となる。このような通信には、低出力のWi-Fi などでは不安定であり、携帯電話の電波利用が不可欠である。

しかし、電波法(昭和25 年法律第131 号)上、陸上移動局は、「陸上を移動中又はその特定しない地点に停止中運用する無線局」と定義されており、ドローンは陸上移動局として認められていない。
また、ドローンで利用される携帯電話端末の数を、総務省と携帯電話事業者が把握できるよう実用化試験局制度が導入されているが、毎回、携帯電話事業者経由で総務大臣の許可を取得することが必要であり、導入の拡大を阻害している。

<実施事項>
a 総務省は、平成30 年度に行った実証試験の結果を踏まえ、ドローンの携帯電話の電波利用を拡大させるために、遅くとも令和2年中にユーザーがウェブサイト経由等で携帯電話事業者に申請することで飛行を可能とできるよう必要な制度改正を行う。

b 総務省は、実証試験の結果を踏まえ、低空を飛行するドローンの携帯電話の電波利用の簡便性を地上での携帯電話利用に近づけるべく、実用化試験局免許について携帯電話事業者による台数の把握等が行われることを条件に総務省が包括的に免許を発出すること等、ドローンが携帯電話の電波を簡易な手続で利用可能とするための新たな仕組みを構築する。

c 制度開始までの間においても、携帯電話事業者による手続も含む申請から許可までの期間を原則1か月以内とするなど、より簡易に携帯電話の電波を使用できる仕組みを構築する。

d 携帯電話の電波が農業用ドローンにとって使いやすいものとできるように、総務省、農林水産省、関係事業者、農業者等からなる場を立ち上げ、実用局制度の在り方、実用化試験局制度の運用等につき定期的に議論を行う。

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エ 農業用の最新型ドローンの普及に向けた取組
【措置済み】

<基本的考え方>
ドローン分野のイノベーションを農業分野に取り込むことは極めて重要であり、そのために国が果たすべき役割は大きい。データに基づいたスマート農業を促進するには、マルチローター型を中心とした航行の安定性の高いドローン導入を強力かつ集中的に促進する必要があり、以下に述べる改革を行うべきである。

<実施事項>
a 次の要素を含む「総合的な農業用ドローン導入計画(仮称)」を農林水産省が中心となって策定する。
– 最新型ドローン導入の目標値
– 導入促進のための地方説明会の開催回数の目標値
– 実質的に「ドローン用農薬」と位置付けられる農薬品目数の目標値
– 農業用ドローンの普及拡大に向けた規制点検や先端技術に関する情報共有
の枠組み

b 農林水産省は、民間事業者のニーズをくみ取りながら農業用ドローンの普及を拡大するために、経済産業省の協力も得て官民協議会を立ち上げる。最新型ドローンについて技術指導指針に基づく都道府県・地区別協議会は廃止し、ドローン推進のための地域組織が必要な場合は、官民協議会の下に新組織を立ち上げる。

※エに関する過去の関連記事→

(2019.6.16)

 

 

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