レベル4に関する所有権、プライバシー・個人情報保護に関する官民協議会の議論

昨今のコロナ状況下の非接触サービスのニーズを受けて、各国において、試験的ではあるものの、有人地帯上空におけるドローン利用の例が見られます。これを契機に、ドローンの法規制に関する議論も進むことも考えられます。

他方で、(特に官が利用する場合における)プライバシーの侵害に関する議論も出ています(関連記事→)。

我が国では、2022年のレベル4の実現に向けて、2020年3月31日の第13回小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会において、飛行規制の枠組みが示されていますが、同時に、他者の権利との調整についての議論もなされています。

1. 土地所有権との調整

まず、他者の土地の上空を飛行する場合の、土地所有権と上空利用の調整に関して、公開されている資料には以下のような記載があります。

(4)土地所有権と上空利用の在り方

① 検討の前提

小型無人機を飛行させることができる空域については、航空法及び小型無人機等飛行禁止法により、

• 航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある空域
• 人又は家屋の密集している地域の上空
• 国の重要な施設等の周辺地域の上空

において一定の規制が設けられている。

一方、これら以外の空域で自由に飛行させることができるかどうかについては、民法において、「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地 の上下に及ぶ。」(第 207 条)と規定されていることから、この規定との関係 についても検討する必要がある。

② 論点の整理

民法第 207 条の規定については、一般に、土地所有権は、当該土地を所有する者の「利益の存する限度」で当該土地の上下に及ぶものと解されており、 土地の上空を小型無人機が飛行したからといって直ちに所有権を侵害する訳ではない。もっとも、「利益の存する限度」内であるか否かは、個別の土地の具体的な使用態様に照らして判断すべきものとされている。 したがって、現状では、他人の土地の上空で小型無人機を飛行させる場合には、当該土地の具体的な使用態様に照らして、土地所有者の利益を害しない範囲でこれを行わなければならない。

このような中、小型無人機を飛行させる者からは、一定の高度を上回る空域で小型無人機を飛行させる場合には土地所有権の侵害とならないようにすべきとの要望がある。この点については、

• そもそも土地の使用態様は多様であり、「利益の存する限度」に一律 の基準を設けることは可能なのか。
• 仮に一律の基準を設けるとした場合、あらゆる小型無人機の飛行にとって、有益な結論となるのか。小型無人機の利活用の形態は、撮影、点検、測量、災害調査、物流など多様であり、一律の基準以下の高度 での飛行について土地所有権との関係で問題があり得るとした場合、 かえって利活用の妨げとなるのではないか。
• 航空機が離着陸するため飛行高度が低くなる空港周辺の地域においては、落下物や騒音等への住民の心配・懸念を払拭するための取組 がなされており、土地所有権というよりもむしろ生活妨害との関係 で対応がなされている。同様に、飛行する小型無人機についてもこ うした対応が求められるのではないか。

③ 対応方策

今後、小型無人機の利活用の規模や形態が拡大することが想定される中、 土地所有権と上空利用の在り方について整理しようとした場合、土地所有権 が個人の重要な権利であるが故に、他の上空利用への影響等を踏まえ慎重に検討する必要があり、また、個別の土地の使用態様は様々であることから、 早期に結論を得ることは困難である。加えて、小型無人機の利活用の形態も多様であるため、一律の基準を設けることがその利活用にとって有益な結論とはならない可能性がある。 また、小型無人機の上空利用については、生活妨害との関係を含め、住民の理解を得るための取組を進める必要がある。 このため、当面は、以下の対策を推進する。

i. 安全・安心な飛行形態の確保

小型無人機の飛行について住民が最初に持つ心配・懸念は、落下等の危険、騒音、プライバシーの侵害であると考えられる。 このため、小型無人機を飛行させる者は、人や物件からの一定の距離の確保や、安全確保対策、保険への加入、プライバシー対策等により、住民が安心できる飛行を確保すべきである。

ii. 一定の飛行経路を設ける場合の住民の理解を得る取組

小型無人機を物流等に用いる場合、一定の飛行経路で、一定の頻度で飛 行することとなり、撮影、点検、測量等と比べ、飛行経路直下の住民の理 解を得る必要性が高くなる。
一方、現在、離島や過疎地への物資の輸送においては、地元自治体とも 連携し、住民の理解を得る取組がなされ、その結果、最初は不安を持った 住民も、小型無人機の有益性を理解・実感する中で、その不安を和らげて いく事例が多い。こうした点を踏まえると、小型無人機の上空飛行に係る課題は、土地所有権に起因する課題として捉えるのは狭きに失し、むしろ、いかに新たな 飛行機体、輸送形態等の社会的受容性を高めていくかという課題として捉え、丁寧に対応することが、その利活用の長期的な発展にも資すると考えられる。

このため、小型無人機を飛行させる者は、上記のような住民の理解を得るための取組に努めることとし、国においても、小型無人機の活用について地元住民の理解を得た好事例を収集・整理し、それを他の地域に横展開する取組を実施する。

iii. 引き続きの検討
上記の取組を実施した場合であっても、今後、小型無人機の利活用が進む中で、上空飛行に対する社会的な受容性をより高めていくために更なる取組が必要となる可能性が考えられる。このため、国においては、諸外国の動向を調査する等、引き続き情報収集を行うこととする。

上空に及ぶ所有権に関して、何か新しい考え方・ルールが検討される可能性もあるかなとも思い、注視していましたが、現行法の枠組みの中で、個別アプローチでいくようです。

2. プライバシー

レベル4に関して、以下のとおり、被撮影者のプライバシーの問題もまとめられています。総務省のガイドラインの枠組みに基づく対策です。

(2)プライバシーの保護

① 検討の前提
小型無人機は高い飛行能力と撮影能力を有していることから、その能力を悪用すれば、予期しない視点から、被写体の同意なしに、かつ、気づかれずに撮影することも可能である。また、このように撮影されたデータを第三者が閲覧できる環境下に置かれた場合、被写体にとって様々な不利益を生じさせることになりかねない。このため、小型無人機の社会的効用とプライバシー保護の両面をいかに調和させるかが課題である。

② 論点の整理
小型無人機による撮影及び撮影映像等の取扱いに関しては、既に「「ドローン」による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」(平成 27 年9月総務省)が公表されており、同ガイドラインでは、小型無人機を利用して撮影した者等が被撮影者に対してプライバシー侵害等として損害賠償責任を負うことになる蓋然性を低くするための取組を例示することにより、法的リスクの予見可能性を高めるとともに、小型無人機による撮影行為とプライバシー保護との関係について整理を行っている。また、このほかにも、参考になる事例として、公道から撮影した道路周辺の画像編集(ストリートビューなど)、防犯カメラ等についても、プライバシー保護等の観点から、地方自治体の条例において、対策が講じられている。なお、同ガイドラインにおいては、小型無人機により撮影をし、それをインターネット上で公開を行う者に対し、撮影の際には被撮影者の同意を得ることを前提としつつ、それが困難な場合には、注意することが望ましい事項として以下の3点を列記している。

• 住宅地にカメラを向けないようにするなど撮影態様に配慮すること
• プライバシー侵害の可能性がある撮影映像等にぼかしを入れるなどの配慮をすること
• 撮影映像等をインターネット上で公開するサービスを提供する電気通信事業者においては、削除依頼への対応を適切に行うこと

③ 対応方策
今後の課題は、小型無人機を用いた撮影及び撮影映像等の取扱いについて注意することが望ましい事項を、操縦者や撮影映像等をインターネット上で公開する者等に対していかに周知し、徹底させるかである。このため、今後、以下の対策を推進する。

• 小型無人機本体及び小型無人機用撮影機材の取扱説明書に、操縦者の遵守事項として、プライバシー保護に関する記述を追加する。
• 業界関係者主催のセミナーに加え、国としてもプライバシー保護に関する知識を普及すべく、具体的方策を検討する。

3. 個人情報保護

また、最近アップされたと思われる上記の官民協議会の議事録(議事要旨)によれば、以下のとおり、個人情報保護に関する言及があります。

● 実際飛ばしていると、プライバシーの問題は無くとも、個人情報について問題になり得る場合がある。例えば、群衆を撮影しながら飛行するドローンについて、個人が特定されない限り個人情報に関する問題はないと解釈してよいと思うが、画像を AI 処理して個人の顔が認識できる程度になった瞬間に個人情報上の問題になるのではないかと言われている。このような場合があり得るため、「プライバシーの保護」の部分において、個人情報」についても明記すべきではないか。

⇒ プライバシーの議論の中で、個人情報も含めて考えている。

(2020.5.17)

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