レベル4を実現するための施策に関する中間報告書

昨日の記事でも言及した、2019年11月28日に開催された小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会(第12回)においては、ワーキンググループによる、レベル4を実現するための施策に関する中間報告書が公表されています。

正式には、無人航空機の目視外及び第三者上空等での飛行に関する検討会による、2019年11月付「小型無人機の有人地帯での目視外飛行実現に向けた制度設計の基本方針の策定に係る中間とりまとめ」です。

報告書は詳細なものですが、概要は以下のとおりです。

まず、レベル4実現の前提として、昨日の記事で取り上げた、機体の情報と所有者等の情報を把握するために登録制度を設けることが必要としています。

その上で、レベル4実現に向けた制度の方向性に関して、(1)機体、(2)操縦者、(3)運航管理の3つの点について、欧米の制度の概要を踏まえて、「制度設計の基本方針の策定に関する論点整理」と「今後の検討の方向性」が取りまとめられており、ここが報告書の肝となる部分と思います。

以下は、当該箇所の抜粋です。

<機体>

④ 制度設計の基本方針の策定に係る論点整理
・ 将来の無人航空機の利活用を支えるためには、航空機・自動車と同様に、飛行毎の許可承認時に国が機体の性能確認を行うのではなく、予め国が機体の性能等を型式毎又は一機毎に審査・証明する制度を導入し、円滑かつ確実に飛行の安全を確保できる仕組みにすべきではないか。
・ 機体の性能等の審査にあたっては、効率的・効果的に審査を行う観点から、国が指定した認証機関が行った場合は、国による審査を省略できる仕組みの検討も必要ではないか。
機体の規模及び飛行するエリア等によって、人等に被害を与える影響は大きく異なることから、それらを踏まえた機体認証区分や追加要件等の検討が必要ではないか。

⑤ 今後の検討の方向性
基本方針のとりまとめに向け、技術開発状況や海外における基準の運用状況を見ながら④に掲げた論点について検討する。具体的には、主に以下の点を中心に検討する。
・ 飛行するエリア(地上の人/有人機の蓋然性(存在の程度))、飛行の方法、機体の規模等に応じて必要となる、耐空性要件や、機体が故障した場合の第三者への危害を軽減する機能・性能について
の検討
・ 上記を踏まえた機体認証区分、国と指定機体認証機関が実施する認証対象、安全基準及び追加要件等の整理
・ 機体認証を活用した国の審査手続の整理 等

 

<操縦者>

④ 制度設計の基本方針の策定に係る論点整理
・将来の無人航空機の利活用を支えるためには、航空機・自動車及び欧米と同様に、飛行毎に国が操縦者の技量確認を行うのではなく、予め国が操縦者の知識・技量を審査・証明する制度(技能証明制度)を導入し、円滑かつ確実に安全飛行を担保できる仕組みにすべきではないか。
・飛行するエリアや方法に応じて必要な技量は異なるため、欧米のように学科試験のみで修了する場合や実技試験を必須とするものなど、技能証明に必要な試験方法等について整理する必要があるのではないか。
技能証明の区分は、機体の種別(回転翼/固定翼)、操作方法(自動/自律飛行・手動操作、目視内・外等)、重量によって必要な技量・役割が大きく異なることに留意し設定すべきではないか。
・操縦者の知識・技量の審査にあたっては民間団体による操縦者の養成環境が形成されている状況を踏まえ、効率的・効果的観点から、指定した講習機関を修了した場合は、審査を省略できる仕組みの検討も必要ではないか。

⑤ 今後の検討の方向性
基本方針のとりまとめに向け、技術開発状況や海外における基準の検討状況を見ながら④に掲げた論点について検討する。具体的には、主に以下の点を中心に検討する。
使用する機体(型式、重量、性能等)や飛行する方法(自動/自律飛行・手動操作、目視内・外等)に応じて操縦者に必要となる技量・運航管理者との役割等の整理
・上記を踏まえた技能証明区分や試験方法等の整理。その際、外国人による活用も見据えた検討が必要
・国と指定講習機関が実施する審査対象の整理
・技能証明の国の審査への活用方法 等

 

<運航管理>

④ 制度設計の基本方針の策定に係る論点整理
・ 無人航空機の飛行に必要な安全対策は運航環境(地形、電波環境等)や事故時の詳細な被害の大きさによって大きく異なることから、国による一律の安全要件だけではなく、欧米同様に運航者自らが飛行に対するリスクを正しく評価し、それに基づき適切な対策を講じることが必要ではないか。
レベル4飛行のようにより安全が求められる場合は、欧米同様に、運航者が継続して安全な運航を行うことができる体制を構築していることを国が個別に審査する必要があるのではないか。
無人航空機の飛行全般に共通する運航管理要件(飛行前の飛行情報共有システムへの入力、補助者等による飛行経路周辺の監視・有人機や他の無人機との安全な離隔距離の確保、不測の事態への適切な対応等)に加えて飛行するエリアや方法に応じて追加で必要となる運航管理要件(衝突防止装置の搭載の義務化、複数の機体が同時に飛行する空域での UTM 等を使用した他の無人機や有人機との飛行計画の調整や動態情報の把握等)についての具体的な整理が必要ではないか。

⑤ 今後の検討の方向性
基本方針のとりまとめに向け、技術開発状況や海外における基準の検討状況を見ながら④に掲げた論点について検討する。具体的には、主に以下の点を中心に検討する。
・飛行するエリア(地上の人や有人機の蓋然性)、飛行する方法(目視外内等)を踏まえたリスク区分に応じた具体の運航管理要件の検討
・運航管理における UTM 活用の可能性
・運航者に求めるリスクアセスメント
・国による個別審査の方法

機体の規模、飛行エリア、飛行方法の度合い・リスクを踏まえて、機体認証・技能証明・運航管理の要件(区分)を変えていくというアプローチが強調されているように思います。前にとりあげた、つい先日実施された政策担当者による講演会でもそのようなトーンが伺えました。

そして、レベル4の社会実装のための「その他の論点」として、①被害者救済、②プライバシーの保護、③サイバーセキュリティー、④土地利用権と上空利用の在り方が挙げられ、①及び②についてごく簡単な論点整理がなされています。③及び④についてはまだ言及がなく、議論はこれからのようです。

(2019.12.8)

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