過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル研究会の第3回会合におけるドローン配送に関する議論

2019年5月29日に、国土交通省の「過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル研究会」(過去記事)の、第3回会合が開催されています。

国交省のHPで議事概要その他関連資料が公表されている他、2019年5月29日の電気新聞が報じています。

初期に立ち上げられたドローン物流に関する会合の中には、長期間休止しているものもありますが、この研究会は、昨年行われた複数の実証実験が出発点になっていることもあり、議論が具体的で、アクティブな印象です。

議事概要を読むと、日本におけるドローン物流の課題が浮き彫りになっています。議事概要の関連箇所を抜粋し、重要と思われる箇所を青色で塗ってみました。

【議題1:各社の取組等】

  • 地域課題である「買物弱者」の解決策として、現在車で行っている商品配送の全部又は一部をドローンで代替する可能性を探るため実証実験等に取り組んできた。平成30年度は目視外補助者無し飛行で4回配送を行った。社会実装に向けては、利用する高齢者が自ら使用できる受発注システム・荷物受け取り方法の構築が必要
  • 現状では、ドローンを飛行させるために多数の人材が必要であるが、自動車と同じもしくはそれ以下の人員で運航できるシステムとするため、機体・運航管理システムの機能向上が必要
  • 地域課題の解決として、買物弱者支援や災害時の救援物資配送など、地域に住み続けたいと思う高齢者等が住み続けられるようにすることが必要。
  • アクア・スカイウェイ構築事業として、河川上空に特化したドローン専用航路の開設と高度なロジスティクスとして、商品の調達から、紹介、注文、配送、決済までのサプライチェーンの確立を推進している。
  • 空飛ぶデリバリーサービス事業として、地域拠点施設から集落内の公民館等への配送をドローンで実施し、ラストマイルはボランティアによる配達を検討。ボランティアによる配達を行うことで、高齢者の見守りや高齢者の地域とのつながりの確保が可能。
  • ケーブルテレビの活用による、注文・決済の省人化に取り組む。高齢者にとってはスマートフォンのアプリよりも使い慣れたテレビのリモコンの方がハードルが低く利用してもらいやすい。ケーブルテレビのマルチデバイス化によるサービス群(買物サービス・交通サービス・医療サービス・安心サービス)の統合により、「観るテレビ」から「使うテレビ」へ変革させることで利用を促進したい。導入期~成長期は公営(業務委託)、成長期~成熟期は民営(独立採算)としたい。
  • ドローンに関するリスクは大きく分けて、機体に関するリスクと第三者への賠償責任に関するリスクの2つ。事業者向けドローン保険は、この2つのリスクを総合的に補償する保険。動産総合保険と施設所有(管理)者賠償責任保険で構成されており、ニーズに応じてリスク毎に引受することが可能。
  • ドローン1機の保険料(年間)の一例は、動産総合保険約1.5万円、施設所有(管理)者賠償責任保険約2.0万円の計約3.5万円。輸送する貨物の補償として、施設所有(管理)者賠償責任保険のオプション特約を用意しており、輸送業務に関わる賠償責任のリスクを包括して契約する運賠(運送業者貨物賠償責任保険)という形での契約も可能。
  • アフリカのルワンダとガーナでは、固定翼ドローンによる血液等の配送がすでに開始している。配送方法はパラシュートによる投下であるため先進国では実施が難しいため、VTOL機(垂直離着陸機)を使用した実証を海外で進めている

 

【議題2:ドローン物流ビジネスモデルの検討】

  • 現状では採算が合わないため、民間事業者が参入することは難しい。そのため、地方自治体が委託するスキームで実証実験している。BtoBとBtoCの間にG(Government:行政)が入ることで住民の安心につながる。
  • 10数世帯の単位で集落が点在しており、点在している集落にドローンで食料品・日用品を配達したい。
  • 容積の大きい貨物よりもお米のように重量の大きい貨物の配送ニーズがある
  • 山間部では電波の弱いところも存在したが、テストフライトで検証し、支障がなかった。
  • ドローンの特徴である速達性を活かした配達商品の選定が重要。
  • 途上国では日本と異なり、物流網が充実していないが、血液等を運ぶ強い必要性があるためドローンの利用が進んでいる。
  • 発展途上国では固定翼機からパラシュートで投下する手段も行われているが、先進国ではVTOL(垂直離陸機)が有用。
  • ドローン物流には、①観光など新たな利便性の提供、②買物弱者対策、③災害対応の3つの視点があると考えている。
  •  収入を増加させるためには他用途利用が重要。特に、技術を共有できる部分については他省庁との連携をお願いする
  • 平時の利用を前提としつつ、災害対応をセカンドバリューとして想定しておくべき。例えば、災害時は災害対応を優先して、平時に河川上空の飛行を認める代わりに、河川管理に活用することも考えられる
  • 上下分離方式も検討したが、分離せずメインとなるサービスの提供者が各分野における再委託する方が効率的と判断した。

 

[支援措置の考え方]

  • 地域住民の生活を守ることは行政の役割であり、行政による支援を行う意義は十分ある。
  • ドローンは地方から始まるイノベーションであり、地方の活性化という観点からも支援はあり得る。
  • 支援措置メニューが複数あればビジネスの展開の幅は格段に広がる
  • 既存物流手段との費用比較に当たっては、全体での比較が重要。例えば、車との比較では事故対策等の費用も車に計上する必要がある。
  • 採算確保が厳しい場合は自治体が機体等を所有するという手法も選択肢としてあり得る。なお、ドローンの技術は日進月歩で進むため今後の展開が見通しづらいので、支援措置の組み立てに当たっては、自治体から民間事業者への譲渡を可能とすることも検討してもらいたい
  • 交通や医療は特別交付税措置の対象であるものの物流は対象となっていないが、物流は買物支援であるため住民の生存権に関わる話であり特別交付税措置をお願いしたい

 

[技術開発に対する考え方]

  • 山小屋への輸送の場合、採算を確保するためには最低でもペイロードが50kg~100kg必要。
  • 採算性を向上させるためには、操縦者の人件費がネック。自動化は車よりもドローンの方が適していると考えられるため技術開発等に期待したい。

 

[環境整備に対する考え方]

  • 物流網を維持するためにドローンは有望な手段。時間を掛け過ぎることなく個人宅への配送を実現したいので環境整備をお願いする。
  • 山岳エリアにおける高度150m未満の維持については、「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」等における議論をお願いする

 

物流ドローンは、都市部よりも遠隔地・過疎地の方が難易度が低く、利活用が期待されるのですが、以下のような課題が確認されているといえます。以前から指摘されているものもあります。

  • 買物弱者である高齢者がスマホを使いこなせない
  • 機体の性能向上が課題である
  • 不採算のため民間参入が難しく行政・地方自治体の補助が必要である
  • ビジネスではなく行政支援という位置づけになってしまう
  • 複数省庁間にまたがる問題でありコンセンサスに時間がかかりそう

日本には機体のパーツに関して他国にも負けない技術力があるという話も聞くのですが、昨今の外国で発表されているビジネス・機体の発展に比べると見劣りし、やや残念です。

他方、セカンドバリューとしての災害対応にも使えるといった指摘は面白いと思いました。

とりまとめのための中間報告案も公表されています。次回の会合では、この中間報告案について議論されるようです。

(2019.6.13)

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