SNSでは以前から話題になっていた事案ですが、2017年に伊東市が2度にわたって実施した防災訓練でドローンを無承認飛行させた市職員を、伊東署が、2019年10月18日に、静岡地検沼津支部に書類送検したニュースが出ています。
2019年10月19日の静岡新聞が報じています。
捜査は私人の告発を契機として開始されている点が特殊です。市に対する安全啓発を促すためだったようです。
防災訓練が、上空飛行に承認を要する「多数の者の集合する催しが行われている場所」(航空法132条の2、第4号)に該当するかが問題となりました。
静岡新聞によれば、伊東市は、訓練参加者は「不特定多数の者」に該当せず、航空法の承認を要しないと主張していたようです。
この主張は具体的にどのようなものだったのかを、少し考えてみました。
まず、「多数の者の集合する催し」については、国交省の「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」に解釈指針が出ています(以下抜粋)。
(8)多数の者の集合する催し場所上空以外の空域での飛行
多数の者の集合する催しが行われている場所の上空においては、無人航空機を飛行させた場合に故障等により落下すれば、人に危害を及ぼす蓋然性が高いことから、航空法第 132 条の2第8号により、一時的に多数の者が集まるような催し場所上空以外の空域での飛行に限定することとしている。
どのような場合が「多数の者の集合する催し」に該当するかについては、催し場所上空において無人航空機が落下することにより地上の人に危害を及ぼすことを防止するという趣旨に照らし、集合する者の人数や密度だけでなく、特定の場所や日時に開催されるものかどうか、また、主催者の意図等も勘案して総合的に判断される。
具体的な事例は次のとおりである。
・該当する例:
航空法第 132 条の2第8号に明示されている祭礼、縁日、展示会のほか、プロスポーツの試合、スポーツ大会、運動会、屋外で開催されるコンサート、町内会の盆踊り大会、デモ(示威行為) 等・該当しない例:
自然発生的なもの(例えば、混雑による人混み、信号待ち 等)なお、上記に該当しない場合であっても、特定の時間、特定の場所に数十人が集合している場合には「多数の者の集合する催し」に該当する可能性がある。
また、「者」の解釈に関して、132条の2第8号のものではないですが、132条の2第7号について、同じく「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」に以下のような解釈指針が出ています。
(7)地上又は水上の人又は物件との間に一定の距離を確保した飛行
飛行させる無人航空機が地上又は水上の人又は物件と衝突することを防止するため、航空法第 132 条の2第7号により、当該無人航空機とこれらとの間に一定の距離(30m)を確保して飛行させることとしている。ここで、航空法第 132 条の2第7号の規定は、飛行する無人航空機の衝突から人又は物件を保護することが趣旨であることから、一定の距離(30m)を保つべき人又は物件とは、次のとおりと解釈される。
・「人」とは、無人航空機を飛行させる者及びその関係者(無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)以外の者をいう。
想像の域を出ないですが、伊東市は、主催者の意図としては、防災訓練参加者は「無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者」であり、「不特定多数の者の集合する催し」とは区別される(該当しない)といった主張をした可能性があるように思いました。
しかし、この主張は難しいと思います。
防災訓練参加者は、防災訓練にてドローン飛行がなされることを知っていても、ドローンの飛行に関与しているという認識はなく、実質的にも、防災訓練での飛行は、催し場所上空飛行と同様の、多数の人に対する危険性があります。
「催し場所上空飛行として」承認を取得すべき事案と思います。
2年経過していますので、紆余曲折を経て、書類送検ということになったと思います。
静岡新聞によれば、市は航空当局に口頭注意の行政処分を受け、捜査への協力と今後の安全運用に努めると話しているとのこと。
(2019.10.25)
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