ドローン利用者と地権者とのマッチングプラットフォーム

ドローン飛行のために、オンラインで航空法上の許可・承認を取得できても、第三者が所有・管理する土地・建物の上空(第三者上空)を飛行できるかは別問題です。第三者の所有権との関係が問題になりますし、地方自治体が条例で飛行を制限することもあります。道路や河川上空の飛行は、特別法(道路法・河川法)上の制約があります。

第三者との所有権との関係については、前にご紹介した、私の「無人飛行機(ドローン)の目視外飛行と第三者上空飛行③」(商事法務ポータル)の中で、以下のように言及しました。

3. 第三者上空飛行に関する法律上の論点

(2) 第三者の権利との調整~土地所有権との関係

ロードマップによれば、今後、第三者上空飛行に関する論点整理が行われることが予定されている。どのような論点が検討されるかは官民協議会の公表資料等により今後明らかになると思われるが、法的に重要なのは、無人地帯上空の飛行の場合とは異なり、第三者上空飛行の場合、航空法上の許可及び承認基準の問題とは別に、第三者の権利との調整を要する点である。そのため、航空法のみならず、私権に係る民法等の法規制も本格的に関連してきて、より難しい法政策判断が必要になる可能性がある。ロードマップの補足資料においても、ドローンと土地の所有権の関係、プライバシーの保護等が検討課題として挙げられている。

特に、私人の土地所有権との関係が大きな問題となる点は明確である。民法上、土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶとされており(民法207条)、ドローンが他人の土地の上空を飛行することが、当該土地の所有権を侵害するのではないかが問題になる。土地所有権を制限する法令に航空法は含まれるが、航空法が制限するのは主に空港周辺の土地利用にとどまり、有人航空機が、航空法に定められた可航空域(家屋密集地域上空では水平距離600mの範囲内の最も高い障害物の上端から300m以上、それ以外は150m以上とされる。航空法81条、航空法施行規則174条)を飛行することによって、当該土地所有者の土地利用権は制限されず、土地所有者が、当該可航空域に高層工作物を建築したり、空間浮遊物体を設置することは妨げられないと解されている。但し、有人航空機によって、土地利用者の利用が実際に妨げられる場合を除き、土地所有者は、有人航空機の運行者に対して、所有権の侵害を理由に、損害賠償や航行の差止めの請求は許されないという考え方が有力である。即ち、所有権の範囲ではなく、所有権に基づく救済方法を制限的に解することによって、私人の土地所有権と有人航空機の航行の自由が調整されているといえる。

これに対して、ドローンについては、現状、「土地所有者の同意なく、その土地の上空を飛行させることは所有権の侵害に当たる可能性がある」という考え方が一般的であり、国土交通省や総務省からその旨を注意喚起するガイドライン等も出されている。しかし、物流分野で利活用するためのドローンの飛行ルートに対応する各土地の所有者から同意を取得するのは大変であり、特に、市街地ともなれば対象所有者の人数も増え、時間やコストの面で現実的ではないように思われる。そこで、ドローンの性能の向上や技術・安全環境の整備が前提ではあるものの、今後、上記の有人航空機と同様の形で整理できるかを検討する余地もある。この場合、ドローンに関しては、可航空域が有人航空機よりも低い150m未満であり、私人の土地利用権、個人のプライバシー権・人格権、機体が発する騒音との調整をより要する場合があること、有人航空機とドローンとでは機体の性能が異なる点等が議論になりうる。

空撮や趣味でドローンを飛行させようとしても、現状では、制約が多く、場所探しに難航します。そのような中、ドローン利用者と、地権者・自治体をマッチングするプラットフォームがリリースされています。

1.  そらチケ

1つは、(株)ドローンエモーションが発表した「そらチケ」です。同社の田口社長にはドローンスクールで親切なご指導を頂き、お世話になりました。

詳細は同社の2018年9月27日付プレスリリースに記載されていますが、仕組みを単純化すると、以下のとおりです。

①ドローン愛好家のユーザーと、(上空飛行を許可する)自治体・地権者がそれぞれ運営者の専用サイトに登録する。
②運営者が、ドローン愛好家にドローン絶景地上空飛行するためのチケットを販売する。
③その代金の一部が、自治体・地権者に対する使用料・ドローン飛行の対物・対人保険の保険料に充てられる。

運用システム提供会社は、株式会社ORSO(東京都千代田区)と株式会社オーイーシー(大分市)で、自治体向けドローン飛行場所管理ツール「DUCT API」を発表しています。

登録地が、気軽に行ける場所なら利用してみたいなと思います。そらチケのフォームに記入し、パイロットの事前登録をしてみました。

2.  佐賀県小城市によるsora shareの利用

佐賀県小城市が、2018年10月11日に、同市内の地権者が上空飛行の可否を登録できるシステムを導入することを発表しています。2018年10月12日付佐賀新聞が報じています。トルビオンズ(福岡市)が開発したシステム「sora share」で、地権者が専用サイトに登録し、ドローン利用者は登録者に使用料を支払う形のようです。市内限定で、空撮・趣味というよりは、商業用の実証実験を対象としているようです。

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