農業用ドローン規制(技術指導指針)の改正の動き

2018年10月14日付のNHKニュースによれば、農業用ドローンに関して、政府の規制改革推進会議が、最新型ドローンの活用が農水省の規制で阻害されていると考え、利用承認に関する新たな仕組みを創設する方向で検討を進めており、年内に改革案をとりまとめる予定とのことです。

NHKは、農水省の規制について、以下のように報じています。

農薬や肥料を散布する農業⽤のドローンをめぐっては、利⽤する際に国の承認を得る必要があり、農林⽔産省が認定した「農林⽔産航空協会」が国の承認を得るための申請を代⾏する仕組みが設けられています

しかし、農林⽔産省の規制で、事前に⾶⾏範囲を設定できる⾃動操縦の機能がついたものや、ドローンに搭載されたカメラを通じて操縦するものなどは利⽤が実質的に認められていないことから、最新型の活⽤が阻害されているという指摘が出ていました。これを受けて、政府の規制改⾰推進会議は、最新型の農業⽤ドローンの普及に向けて、「農林⽔産航空協会」が担っている申請代⾏の仕組みを廃⽌し、利⽤を承認する新たな仕組みを創設する⽅向で検討を進め、年内に改⾰案を取りまとめる⽅針です。

農林水産航空協会が申請代行することと、農林水産省の規制により最新型の活用が阻害されているという点がどう繋がるのかが、分かりにくいところです。

この点、規制改革推進会議の、第1回農林ワーキング・グループにて提出されている資料(株式会社ナイルワークス作成)によれば、

「農林水産航空協会が、無人ヘリ関連の私的認定行為を収益源とする営利団体にすぎないのに、農水省の局長通知が法的根拠の無いお墨付きを与えているため、国による許認可行為を代行する行政機関であるかのように振る舞い、自動操縦の普及を妨害する発言と農業現場への介入を繰り返している」

との記載があります。

この議論は、「農業分野における小型無人航空機の利活用拡大に向けた検討会」の第1回(平成30年8月7日)でもより詳細に行われています。検討会におけるナイルワークスの主張を整理すると、以下のとおりです。

農水省消費安全局長通達の「空中散布における無人航空機技術指導指針」の下では機体認定・オペレーター認定制度があるが、当該認定行為は、農林水産航空協会に委託されていること

②当該認定は法律上の根拠がないのに、これを取得できないと農業現場ではビジネス上の不利益を被ること

③農林水産航空協会は、共同防除と教習認定ビジネスを収益源としており、操縦者不要で個別防除ができる自動飛行ドローンを普及させる事業者と利害が対立しており、後者については、機体認定・オペレーター認定を受けられないこと。そのため技術革新が進まないこと

上記①②の技術指針に基づく機体認定・オペレーター認定は、農水省消費安全局長通達の「空中散布等を目的とした無人航空機の飛行に関する許可・承認の取扱いについて」に基づくものです。

ナイルワークスの主張に対して、農水省からは以下のような発言がなされていましたが、今回の規制改革推進会議は、より改革を進める方向で舵を切ったように思えます。

(植物防疫課)ナイルワークスからの指導指針に係る指摘に関連して、指導指針について現在の我々の検討状況を紹介したい。指導指針は農薬の空中散布が安全かつ適切に行われるため作ったもの。航空法が改正され、航空法に基づく飛行の許可・承認に関する手続きが加わったが、国交省と協議のうえ代行申請ができるよう整理し、それに関わる手続きも指導指針に記載。指導指針により農薬散布に携わる方々に情報提供と手続きを案内しているところ。航空法に基づく手続きは幾通りかあり、指導指針では代行申請を記載している。指導指針の内容について、「こうでなければならない」という印象を持つ方もいるようだが、空中散布をしようとする者が利便のよい申請方法を選択できるよう、適切な情報提供や指導指針の記載の修正を検討している。代行申請の手続きを行う団体も、間口が広がるよう1年前から申請手続きを実施。ユーザーの利便性のよい体制を整えつつ、我々の手続きが「必ずそうしなければならない」という限定的な印象とならないよう、検討会での議論も踏まえながら指導指針の修正を検討したい。

最新型の利用を承認する新たな仕組みの導入は、先日述べた、農業用のドローンの審査要領の緩和の動きにも関連すると思われます。最新型により安全・容易な飛行が可能になれば、航空法上の許可・承認要件の緩和にも繋がると思われるからです。

なお、2018年10月12日付で作成されている、規制改革推進会議第3期の重点事項の1つとして、農業分野におけるドローンの利活用があげられており、「農村の人手不足の緩和と農業の生産性向上を図るべく、ドローン、高機能農機の活用を阻む規制の見直しに緊急に取り組む」とされています。

地方創生相は、2018年10月18日に実施された日経等へのインタビューで、同様の発言をしています(国税庁への口利き疑惑に関する週刊誌報道の方が注目されてしまいましたが)。

今後のルール改正の動向が注目されます。

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