農業分野におけるドローンの利活用拡大検討会(第2回)の概要

前の投稿でもまとめましたが、農業用ドローン規制の緩和について、「農業分野における小型無人航空機の利活用拡大に向けた検討会」において、活発な議論がなされています。

2018年9月25日に行われた2回目の会合の議事録が農水省のHPにおいて公開されました。

農業用ドローンについて、現行の規制(航空法上の審査要領農水省のガイドライン技術指針)を緩和するかという点について、3つの論点に関する議論がなされています。

参加者(委員・オブザーバー)の間でも立場や、ドローンの安全性・農業の効率化に対する考え方等の相違から、見解が分かれています。

「情報提供者」として参加している、農業ヘリの大手で、農業用ドローンにも進出しているヤマハと、自動飛行農業用ドローンに自信を持つナイルワークスとの間でも、以下のような応酬もあり、対抗意識も垣間見れ、興味深いです。

(ナイルワークス)50 cm以上の飛行精度では、飛行する範囲をほ場内に設定しても、飛行中にほ場外の人がいるところに機体がはみ出す可能性がある。補助者の議論は、人がいない場所に限定した飛行精度が機体に備わっているかを議論した方が良い。

(ヤマハ発動機)30年以上無人ヘリに携わっている。農場に人が立ち入るかどうかは、地域によるがあり得ること。また、あくまで通行される方、車で通っている方が主体であるため、補助者は、何か侵入があった場合には車ではなくて散布作業を止める必要がある。自動飛行の精度はGPSに依存するため、受信の不具合等、何かあったときに必ずしも精度は担保されない。さらに、モーター等に不具合が起き、機体をコントロールできない状況に陥った場合に、どうカバーするのか議論をすべきだと思う。

(ナイルワークス)位置情報の精度の不確実性が検出されたら、その場で機体を停止する機能がある。さらに停止可能かさえも不明な状態になった場合は、軟着陸するようなフェールセーフ機能も備わっているので安全の確保は可能。その前提で補助者の議論をしてほしい。

 

3つの論点について、色々な発言が出ているのですが、簡単に要点を整理してみると、以下のようになるかなと思います。

1  農薬散布に係る目視内飛行の場合の補助者配置義務について(※技術指針上の規制)

(1) 補助者不要を主張する論者の論拠

・中山間地域や、農地が広大で集約されている北海道のように、第三者が入ってこないエリアも存在する。地域の実態を踏まえて、規制緩和の検討を進めるべき。

・(新潟市の)水田は平坦な地形にあり、200m以上先でも人の存在を視認できる。クラクションのようなものをドローンに付け、人を見つけた際に注意喚起するなどすれば補助者は不要

・ドローンの飛行範囲をほ場に制限する機能を活用すれば、操縦者だけでも目視できれば十分対応できる

・人の立ち入りや車両通行の規制といったルールを定めれば安全な散布はできる

・(自動飛行について)位置情報の精度の不確実性が検出されたら、その場で機体を停止する機能がある。さらに停止可能かさえも不明な状態になった場合は、軟着陸するようなフェールセーフ機能も備わっているので安全の確保は可能

(2)補助者必要を主張する論者の論拠

・地域によっては農場に人が立ち入ることもありうる。その場合、補助者が散布作業を止める必要がある。

・突風が吹いたときなど、オペレーターが即座に対応し、隣のほ場への飛散を防いでいるのが実態。何十m先の風が関知できるセンサーがあれば別だが、自動飛行で突風を感知できるような時代がやってくるのか疑問

・農業に関わりのない周辺住民が、ほ場の上をドローンだけが飛んでいるのを見て受け入れられるのか疑問

・日中にドローンに興味を持った子どもが近づいてくる可能性がある。

・無人航空機の信頼性、安全性はまだ担保されているとは言えないのが現状。

・自動飛行の精度はGPSに依存するため、受信の不具合等、何かあったときに必ずしも精度は担保されない。

この論点に関しては、今後、補助者なしとできる場合の条件が議論される予定です。

 

2  目視外飛行を認める場合の要件について(※審査要領上の規制)

(1)目視外飛行に積極的な立場の論拠

・利便性や効率を考えると、規制の緩和について現場は期待している。

・生育調査を行う場合には、歩くだけでも相当の距離があり、時間がかなりかかるため、ドローンによるセンシングのニーズがある。ハウス内のトマト等の生育調査を行う場合には、作物の陰に入って目視外になることもある。

・自動操縦ドローンでの風速の感知は可能。突風が吹いた場合に、散布を停止する機能は既に実装している。

(2)消極的な立場の論拠

・農業場面では省力化が必要とされており、ドローンのような技術は魅力的だが、農薬散布に関する住民の抵抗感は大きく、安易な技術導入には懸念がある。便利さだけにとらわれるべきではない。

・目視外については、農業以外の用途も広くあり、国交省のガイドラインもすでに運用されている中で、農業分野だからといって特別な扱いが必要かは現時点では不明確。

・現在は、補助者が離れた場所の風の強さを感知し、その情報を受けたオペレーターが風による農薬の飛散を考慮して飛行位置を調整して散布を実施している。自動操縦ドローンの場合には、数十メートル先の風を感知して農薬が飛散しないよう調整して飛行することか可能なのか疑問。

この論点に関しては、「議論がまとめきれなかった」とのことで、改めて議論される予定です。

 

3  最大離陸重量25kg以上の機体の場合に追加基準を必要とするか

(1)必要説の論拠

・飛行高度が低い場合でも、ある程度の重量がある農薬を持ち上げられるということは相当なパワーを持ったものが空中に浮いているということになるので、機体が暴走する可能性もあるため、25 kg以上の機体に係る基準は必要

(2)不要説の論拠

・現行の追加基準の内容は重量にかかわらず当然満たすべき内容であり、25 kg以上の機体のみ追加基準を満たす必要があるというのは不自然

この論点に関しては、大型化のニーズも踏まえ、今後25kgという上限を見直せないかという点が議論されることになっています。

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