「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」が改正される(2019年7月26日公布・施行)

昨日少し頭出ししましたが、国土交通省により、2019年7月26日に、無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領が一部改正され、同日に施行されています(国空安企第98 号、国空航第794 号、国空機第494 号)。国交省のHPにて公開されています。

この改正に関するパブコメ(意見募集)のページによれば、「2020年7月24日から開催される東京オリンピック・パラリンピック大会までに、全ての許可承認を受けた無人航空機が本改正を適用したものとするため(許可承認期間:最大1年)」、パブコメ期間が短縮され、即日施行となっています。パブコメ結果も公表されており、50件のQAが記載されています。

直近の改正は2018年9月に行われていますが、この時は、目視外飛行を緩和する方向での改正でした。1年足らずで、今回は許可・承認の要件が大きく加重されることになり、厳格化の方向での改正です。

ドローンを業務等で飛行するために許可承認を取得する実務に影響を与える重要な改正になります

以下、概要について、まとめてみました。

1  主要な改正点

今回の改正点は、7月初めに発表されており主に以下の3点です。

(1)飛行前の飛行情報共有システムへの入力

無人航空機の飛行情報を共有し有人航空機等との衝突を防止するため、審査要領4-3-1 に、無人航空機を飛行させる際には飛行情報共有システムに、飛行する日時、場所等を入力する旨を追加

(2)催し場所上空の飛行にあたっての主催者の同意に関する書類の提示

審査要領2-2(申請書記載事項の確認)に、催し場所上空を飛行する場合は、5-6に従って主催者等との調整を行った結果を記載する旨を追加

(3)人口集中地区における夜間飛行等の申請時における飛行経路の特定

2   改正された審査要領の該当箇所

審査要領の新旧対照表が発表されていないので、以下、改正された審査要領本文の該当箇所の整理を試みます。なお、パブコメ意見は、あまり改正内容に反映されていないように思われます。

(1)飛行前の飛行情報共有システムへの入力

審査要領4-3-1(2)(p13~14)の、以下の記載になります。

4-3 無人航空機を飛行させる際の安全を確保するために必要な体制
4-3-1 次に掲げる事項を遵守しながら無人航空機を飛行させることができる体
制を構築すること。
(1)第三者に対する危害を防止するため、原則として第三者の上空で無人航空機
を飛行させないこと。
(2)飛行前に、気象(仕様上設定された飛行可能な風速等)、機体の状況及び飛行経路について、安全に飛行できる状態であることを確認すること。
また、飛行経路に係る他の無人航空機の飛行予定の情報(飛行日時、飛行範囲、飛行高度等)を飛行情報共有システム(国土交通省が整備したインターネットを利用し無人航空機の飛行予定の情報等を関係者間で共有するシステムをいう。)で確認するとともに、当該システムに飛行予定の情報を入力すること。ただし、飛行情報共有システムが停電等で利用できない場合、または専ら公益を図る目的での飛行であって、飛行予定を秘匿する特段の必要性が存し、飛行予定の情報共有により無人航空機を飛行させる者の正当な業務に著しい支障が発生すると認められる場合は、この限りでない。なお、この場合においては、国土交通省航空局安全部安全企画課に無人航空機の飛行予定の情報を報告するとともに、自らの飛行予定の情報が当該システムに表示されないことに鑑み、当該無人航空機を飛行させる者において特段の注意をもって飛行経路周辺における他の無人航空機及び航空機の有無等を確認し、安全確保に努めること

上記但書(停電時等の例外。オレンジ色)は、パブコメp4が反映されたものです。

(2)催し場所上空の飛行にあたっての主催者の同意に関する書類の提示

審査要領2-2-2(8)(p8~9)の以下の記載になります

2-2 申請書記載事項の確認
許可等の申請にあたっては、次の要領に従って申請書が作成されていることを確認すること。

2-2-1 法第132 条に定める飛行禁止空域における飛行に係る許可の申請書記載事項

(略)

2-2-2 法第132 条の2に定める飛行の方法によらない飛行に係る承認の申請書記載事項

(略)

(8)その他参考となる事項
・2-2-1(8)に同じ。
・多数の者が集合する催し場所の上空における飛行の申請の場合には、5-6(1)c)エ)、5-6(2)c)又は5-6(3)c)に従って催しの主催者等と調整を行った結果を記載すること。

(3)人口集中地区における夜間飛行等の申請時における飛行経路の特定

審査要領に添付されている「様式1」(★無人航空機の飛行に関する許可・承認申請書の雛型)の「飛行経路(飛行場所)」に関する注記(*4)に以下の記載があります。

次の飛行を行う場合は、飛行の経路を特定し記載すること。それ以外の飛行であって飛行の経路を特定できない場合には、飛行が想定される範囲を記載すること。
・進入表面等の上空の空域又は航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める空域における飛行
・地表若しくは水面から150m以上の高さの空域における飛行
・人又は家屋の密集している地域の上空における夜間飛行
・夜間における目視外飛行
・補助者を配置しない目視外飛行
・催し場所の上空の飛行
・趣味目的での飛行

3 考えられる影響

今回の規制は、許認可申請の実務に大きな影響を与えることは必至ですが、具体的には以下のような点が考えられます。

  • 2(1)(3)の規制は、ドローンの飛行を検討する者にとって、事務的な負担が重くなります。
  • 2(1)の規制は、操縦者の情報が公開されますので、心理的な負担も課されます。
  • 2(3)の規制により、包括許認可申請ができる場面は限定されます。但し、パブコメp9によれば、場所を特定した夜間飛行の1年間の包括承認は引き続き認められるとのことです。
  • 2(3)の規制により、趣味目的で、許可承認を取得した上での飛行は手軽にできなくなりそうです。

4  違反の効果

パブコメp7によれば、以下のようなQAがあります。

Q:  申請がない場合の罰則規定やその他の有無は?また、申請後のキャンセル、無飛行などへの対応はどのように考えてるか?

A:  許可等の条件に従わなかった場合には、許可等の取り消し又は新たな条件が付される可能性があります。

上記の回答からすると、直ちに、「許可・承認条件を遵守しない = 無許可・承認」という訳ではないという考え方のように思われます。

5   適用時期・適用範囲に関する考え方

2019年7月26日前に許可・承認取得済みのものについては、改正審査要領に導入された新たな規制の適用はありません。国交省のHPにも以下の記載があります。

本日以降の本改正の施行により、今後、新たに航空法に基づく許可・承認を受け、飛行を行う場合は、その都度、飛行前に「飛行情報共有システム」を利用して飛行経路に係る他の無人航空機の飛行予定の情報等を確認するとともに、当該システムへ飛行予定の情報を入力することが必要となります」

また、上記2(1)(2)(3)は、許可・承認の要件として求められるものです。そのため、許可・承認を不要とするエリア・態様の飛行には影響がなく、この場合には、飛行情報共有システムへの入力は不要ということになります。

(2019.7.27)

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