ドローン散布に利用できる農薬の範囲拡大の動き

農業の人手不足を背景に、農業用ドローンの規制緩和は急ピッチで検討されています。

先日の投稿では、農業用ドローンの補助者・目視外飛行に関する規制緩和の議論について取り上げましたが、農薬規制についても見直しの動きがあります。

2018年10月31日の日本農業新聞は、規制改革推進会議農林ワーキング・グループの議論の中で、ドローン散布可能な農薬の範囲を広げる検討がなされていると報じています。

同ワーキング・グループのHPにおいて、農水省の説明資料を見ることができます。

農薬は、農薬取締法で規制されており、農林水産大臣の登録を受けた農薬のみが、販売・使用の対象です。農薬の使用者は、農薬容器の表示に従って使用する必要がありますが、農薬の希釈倍率が定められており、希釈倍率よりも高濃度の農薬を散布することは禁止されます。この点を定めているのが、下記「農薬取締法」「農薬取締法施行規則」「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」です。備忘も兼ねて、この点に関連する条文を下記に列記しています。

地上散布用の農薬は、多く使うことが前提となるため、人や家畜に危険を及ぼさないとの理由から、一般に高い希釈倍数(=低濃度)が義務づけられています。しかし、ドローン散布の場合には、積載量の制限もあり、散布の量が少量で、高濃度の農薬が必要になります。そのため、ドローン散布に使用できる農薬が非常に限られていました。

農水省の説明資料によれば、特に、現在、みかん等のかんきつに利用できるドローン用農薬は2種類のみで、愛媛県からは、地上散布が認められている32種の農薬について、ドローン散布を認めて欲しいという要望が上がっているようです。

そこで、今後、認められる希釈倍数の見直しを行い、ドローン散布に利用できる農薬の範囲拡大、手続の合理化等が検討されるようです。2018年度中に結論が出る予定とのことです。

 

<農薬取締法>

(農薬の登録)
第二条 製造者又は輸入者は、農薬について、農林水産大臣の登録を受けなければ、これを製造し若しくは加工し、又は輸入してはならない。(以下略)

2 前項の登録の申請は、次の事項を記載した申請書、農薬の薬効、薬害、毒性及び残留性に関する試験成績を記載した書類並びに農薬の見本を提出して、これをしなければならない。

一~二 (略)

三 適用病害虫の範囲(農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる薬剤にあつては、適用農作物等の範囲及び使用目的。以下同じ。)及び使用方法

四~六  (略)

七 貯蔵上又は使用上の注意事項

(以下略)

(製造者及び輸入者の農薬の表示)
第七条 製造者又は輸入者は、その製造し若しくは加工し、又は輸入した農薬を販売するときは、その容器(容器に入れないで販売する場合にあつてはその包装)に次の事項の真実な表示をしなければならない。(以下略)

一~四 (略)

 登録に係る適用病害虫の範囲及び使用方法

六~九 (略)

十 貯蔵上又は使用上の注意事項

(以下略)

(農薬の使用の規制)
第十二条 農林水産大臣及び環境大臣は、農薬の安全かつ適正な使用を確保するため、農林水産省令・環境省令をもつて、現に第二条第一項又は第十五条の二第一項の登録を受けている農薬その他の農林水産省令・環境省令で定める農薬について、その種類ごとに、その使用の時期及び方法その他の事項について農薬を使用する者が遵守すべき基準を定めなければならない。

2 農林水産大臣及び環境大臣は、必要があると認められる場合には、前項の基準を変更することができる。

3 農薬使用者は、第一項の基準(前項の規定により当該基準が変更された場合には、その変更後の基準)に違反して、農薬を使用してはならない

(罰則)
第十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 (途中略)第十二条第三項の規定に違反した者

(以下略)

**********************
<農薬取締法施行規則>

(農薬の表示の方法等)
第七条 (略)

 法第七条第五号の登録に係る使用方法の表示は、適用農作物等の種類ごとに、次に掲げる事項を記載してしなければならない。

一 単位面積当たりの使用量の最高限度及び最低限度

 希釈倍数(農薬の希釈をした場合におけるその希釈の倍数をいう。)の最高限度及び最低限度

三 使用時期

四 農作物等の生産に用いた種苗のは種又は植付け(は種又は植付けのための準備作業を含み、果樹、茶その他の多年生の植物から収穫されるものにあつては、その収穫の直前の収穫とする。)から当該農作物等の収穫に至るまでの間(次号において「生育期間」という。)において農薬を使用することができる総回数

五 含有する有効成分の種類ごとの総使用回数(生育期間において当該有効成分を含有する農薬を使用することができる総回数をいい、法第二条第三項に規定する登録票に当該総回数が使用時期又は使用の態様の区分ごとに記載されているときは、当該区分ごとの当該総回数とする。)

六 散布、混和その他の使用の態様

七 前各号に掲げるもののほか、農薬の使用方法に関し必要な事項

***************************
<農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令>

(農薬使用者の責務)
第一条    農薬を使用する者(以下「農薬使用者」という。)は、農薬の使用に関し、次に掲げる責務を有する。

一    (略)

二    人畜に危険を及ぼさないようにすること。

三~六 (略)

(表示事項の遵守)
第二条    農薬使用者は、食用及び飼料の用に供される農作物等(以下「食用農作物等」という。)に農薬を使用するときは、次に掲げる基準を遵守しなければならない

一~二 (略)

三    農薬取締法施行規則第七条第二項第二号に規定する希釈倍数の最低限度を下回る希釈倍数で当該農薬を使用しないこと

四~五 (略)

2. (略)

 

 

 

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